原告 第7回準備書面


平成17年(行ウ)第12号怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件

原   告  花  上  義  晴

            ほか20名

被   告  厚  木  市  長

 

2006年7月14日

横浜地方裁判所民事第1部合議A係 御中

 

                 原告ら訴訟代理人

                  弁 護 士  梶  山  正  三

 

原告第7準備書面

 本書面は、被告準備書面(4)に対する認否反論等を述べるものである。

1 はじめに

  被告準備書面(4)(以下、本書面においては、「被告頭書書面」という)は、いわば「苦し紛れ」の主張に満ちている。今までとは全く異なる(今まで、全く主張してこなかった)主張を持ち出したり、全くの事実誤認又は意図的な事実の歪曲に基づいていたりしているところに、被告らしさが良く出ている。以下、具体的に指摘するが、被告の苦し紛れの主張に細かな点まで一々付き合うのも煩瑣なので、それが誤りであるゆえんをできるだけ端的かつ簡潔に指摘することとした。

 

2 本件市道の状況と法的性格に関する「嘘」

 (1) 本件市道は「歩きやすい道」

 西山尾根道を主とする本件市道は、決して「起伏が激しい」ことはないし、歩きやすい道である。標高もさして高くないから、古くから多くの人が歩いてきた道であることは、既に多数の書証を提出して立証してきた。つまり、ハイカーの歩く道でもあり、通行路としても優れている。被告が「付け替え道路」として認定した「市道」に比べれば、比較にならないほど安全で歩きやすい道である。この点は、原告第6準備書面で詳しく述べた。さらに、前回期日に提出した45〜甲80号証を熟読されたい(これ以外にも関連する多数の書証を既に提出している)。被告は、自己の主張の誤りに気がついて、きっと赤面するに違いない。

 

 (2) 本件市道の供用開始に関する主張のお粗末

  被告は、「本件旧市道敷地は、路線認定されているが」「供用開始されていないから」「道路法上の道路ではなく」「これを通行することは許されない」という。

  唖然とする主張である。仮にも、こんな主張が成り立つのなら、当初からなされるべきであろう。「苦し紛れ」であることが歴然としている。しかも、法律の条文をろくに読まないという初歩的な誤りを犯している(以前にも原告は、被告が、採石法に基づく「許可」だとか、神奈川県土地利用調整条例による「許可」だとか、法律を読まないがゆえに初歩的な誤りを犯していることに関して適切に戒めたはずである)。その点少しも反省が見られない。

  道路法182による「供用開始」については、道路法施行後に新たに開設・築造等された道路に関してのみ適用され、道路法施行時において既に存在している既存の道路に関しては次の通り、「みなし規定」がおかれている。すなわち、下記の通り、同項「但し書き」によると、路線として認定されれば、「既に供用開始されたもの」とみなされるのである。

 「ただし、既存の道路について、その路線と重複して路線が指定され、認定され、又は変更された場合においては、その重複する道路の部分については、既に供用の開始があつたものとみなし、供用開始の公示をすることを要しない。(下線は当代理人)

  現在の道路法は、昭和27年に成立・施行された(昭和27(1952)610 法律第180号、昭和27(1952)125 施行)。本件市道は、江戸時代から歩かれてきた道路であり、昭和27年において、「既存の道路」であることに疑問の余地はない。

  なお、旧道路法は、大正8年に成立し、翌大正9年に施行され、現在の道路法の施行により、廃止されたものであるが、これには「供用開始」に関する規定はない。

  本件市道を「厚木市の貴重な観光資源」と位置づけ、多くのハイカーによる歩かれてきたことを認めている被告が、今になって「これを通行することは許されない」などと云うのは、滑稽である。いくら苦し紛れとはいえ、「恥の上塗り」をすべきではない。

  かつての厚木市長は、これほどの無茶は云わなかった。昭和49年に訴外相模興業が、本件市道の一部を損壊し、市道上の発句石を掘削・移動した行為(発句石侵害行為)を厚木市の財産である市道及び文化的遺産である発句石に対する各侵害行為と認め、本訴における原告花上義晴による監査請求に基づく監査委員の措置勧告に素直に従って、その原状回復の措置を取らせたことは記憶に新しい(8184)。当時の厚木市長は、素直に本件市道の管理者としてその原状回復と保全措置の必要性を認めたのである。

それに比して、現市長が本訴で主張してきた、「道路管理上の責任を負わない」とか「未だ公共用物」ではないとか、いくら法律を知らないからと云っても、許されるものではない。

  

3 開発行為に伴う市道付け替えの必要性という「嘘」

  被告は、相模興業の採石計画の認可がなされた以上、かかる地域一帯で開発行為が行われることから、「工事等によって公衆による道路の往来に危険が生じ、また隣接私有地の地盤面の原状を変更する場合には、道路の維持保全に極めて困難が生じることは想像に難くない」などと主張する。

  被告がここで言いたいのは、本件市道を「維持」しても、周辺が相模興業に開発されたら、道路それ自体が危険になるじゃないか、ということである。

  しかし、そんな心配は全くないのである。理由は簡単で、「無効な本件市道の廃止処分がなされなければ、相模興業の採石場増設計画は不可能になる」からである。つまり、新たな開発行為は行われないので、上記危険は生じる余地はない。つまり、本件市道が廃止されなければ、新たな開発行為はなされないのだから、新たな開発行為による本件市道の往来等の危険を前提にして、その「付け替え」を云うのは明白な誤りである。

  なお、上記説明が、被告には理解できないのであれば、詳しく説明する用意がある。しかし、被告でもこの程度は理解できるであろう。そもそも、本件市道を廃止しなければ、相模興業の採石場増設計画が不可能であるからこそ、同社の利益を図るために、本件市道廃止処分をしたのが、被告なのであるから。そのことは、「無効な廃止処分をされた市道」の位置を地図上で確認するだけでも理解できるはずである(訴状添付の図面において、I-519,I-505,I-534,I-519,I-506,I-507,I-705などの位置を確認されたい)。西山尾根道(I-705)だけでなく、山麓からその尾根道に至る派生した尾根道も今回廃止処分をされた市道に含まれている。これらが残存する限り、相模興業の採石場増設計画が成り立たないことは一目瞭然である。つまり、「新たな開発行為」がなされる懸念はないのである。

  そして、上記「開発行為による危険の発生」を前提にした「付け替え道路の必要性」を云う被告の論は、その前提を欠き失当と云わざるを得ない。実は、本書面で被告が述べている屁理屈は、厚木市監査委員が、被告の担当者にかねてから入れ知恵してきたものであって、原告らとしては、いつ、この屁理屈が登場するのか、あるいは、いくら何でも、これほど馬鹿げた主張は出ないであろうと考えていたのだが、残念である。

蛇足だが、その「付け替え道路」が原告第6準備書面で述べたように「危険な道」「山蛭の季節には、足下から無数の山蛭が湧き出して歩けない道」であることが明らかになった現時点では、如何なる意味でも「付け替え道路」なる真実に反する言い訳を相手にする者はいないはずである。なお、被告からの反論も予想されるので付け加えておくと、「付け替え道路」の全部が「山蛭ロード」だということではない。山腹に付けられた巻き道の多くはの湧き出す道だが、麓に近い道はそうではない。しかし、そこはゴルフ場からゴルフボールが頻繁に飛んできてやはり「危険な道」だったりするのである。

 

4 本件市道廃止処分の違法性

  本件市道廃止処分の違法性については、原告第2準備書面において整理して述べ、さらに、「付け替え道路」称する道路が、危険きわまりない「通行困難な道路」であること、財産的価値も皆無に近いこと、道路敷きに全く不要な部分を大幅に取り込んでいること、などの点からも違法であることは、原告第6準備書面で述べた(同書面2ページ)。

  本件市道廃止処分が「道路法上の道路管理行為」「道路整備の目的」とは全く無関係になされたことは明白であって、その違法性(違法であるがゆえに無効)は明らかである。

  道路管理者として、道路整備の必要性から、本件市道廃止処分の適法性を云う被告の主張が失当であることは、上記のように「付け替え」の必要性もなく、また、現実になされた「付け替え」が、単なる「悪路を抱え込む」ものでしかないのであるから、その主張の誤りは明々白々といって良い。

 

5 道路法の「射程外」というとってもおかしな主張

  被告は、本件市道の「景観利益や歴史的価値、観光資源としての価値」は道路法の射程外であるから、それらに関する原告らの主張は失当であるなどという。

  何か、勘違いしているのではないか

  原告らは、道路法上の「守られるべき利益」として、「景観利益や歴史的価値、観光資源としての価値」を主張しているのではない。本訴請求は、地方自治法242条の2に基づくものである(そんなことは分かり切っているはず)。

  本件市道廃止処分ほど明白に道路法に反する行為はない。その主張の根幹は、本件市道廃止処分は、「道路整備」などの如何なる意味でも道路法上の目的を有しないだけでなく、道路網の整備という観点からも、有害な行為であり、「反道路法的」である。それが「本件市道廃止処分」の違法かつ無効主張の根幹である。市道廃止処分が無効ならば、それを前提にした本件土地交換契約も財務会計上の規定に反するものとして無効である。そのような原告らの主張の構造を理解してれば、被告のような勘違いはあり得ない。

  本件市道の「景観利益や歴史的価値、観光資源としての価値」は、被告自身もその価値を認めているように、「主観的価値」ではなく、客観的に多数人に認められてきた価値であって、客観的に高められた上記価値は、その財産的価値の一部をも形成するのである。

  その意味で、上記主張は、本件土地交換契約における「価値ある土地と有害無益(危険であるが故に負の資産)な土地との交換」という土地交換契約の財務的違法事由(資産価値の著しいアンバランス)につながり、一方において、「そのような価値の故に、古来から多数の人に歩かれてきた通行路としても優れた道路」であることの間接事実として主張してきたものであって、本件市道廃止処分の無効事由との直接のつながりはない。

「通行路として優れた道路」を「悪路と付け替える」ことは確かに道路法上の違法事由であるが、そもそも本件市道廃止処分の違法性は、「付け替え」の理由も必要もなく、「付け替えによって、道路網が失われた」ことにあるのだから、上記諸価値を「道路法上保護されるべき利益」して主張していると見るのは、曲解なのである。

  被告も、その程度は理解して欲しい。

 

6 被告の支離滅裂

  回を重ねるごとに被告の主張の支離滅裂ぶりがはっきりしてきた。当初は、相模興業の代理人の如く、本件と無関係なアセスメント手続、土地利用調整条例の手続、採石計画の認可手続が「滞りなく終わった」ということばかりを述べていたのが、道路法に基づく「道路網整備」を言い出し、さらに、その理由として、今回は、「本件市道は通行してはならない道路」だとか、「開発行為によって危険が生ずるから付け替えるのだ」とか、法的にも、事実に関しても、支離滅裂な主張を展開するに至った。

  原告らの「違法主張」に正面から、かつ、真面目に応答すべきである。それが、厚木市長としての、また、市政の最高責任者としての当然の責務であろう。

(終)


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平成17年(行ウ)第12号怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件

原   告  花  上  義  晴

            ほか20名

被   告  厚  木  市  長

 

2006年7月14日

 

横浜地方裁判所民事第1部合議A係 御中

 

                 原告ら訴訟代理人

                  弁 護 士  梶  山  正  三

 

人証及び検証の申し出

 原告らは、その主張事実立証のため、次のとおり、人証の申し出及び検証の申し出をします。

第1 人証の申し出

1 人証の表示

 (1) 住  所  訴状のとおり

原告本人  荻  田     豊

         (主尋問予定時間30分)

 (2) 住   所  訴状のとおり

原告本人  花  上  義  晴  

         (主尋問予定時間30分) 

 (3)     所  訴状のとおり

原告本人  川  田  利  夫

         (主尋問予定時間30分) 

 

(4)  住  所  厚木市中町3丁目1717厚木市役所内

   被告本人  山  口  巖  雄

 (主尋問予定時間30分) 

 

 2 立証趣旨

   上記各人証に係る「立証趣旨」については、本年63日付、「原告らの立証計画について」及び同月5日付「立証計画の追加」の各書面に記載のとおりなので、これを引用する。

 

 3 尋問事項

   別紙のとおり。

 

 4 立証計画と本件人証申し出との関係

   前回期日に立証計画とその追加を提出しましたが、裁判所から、人証をもっと絞るようにとの示唆があったと理解しています。そのうえで、検討した結果、人により、その得意分野が異なるので、厳選した上、証言する事項が極力重ならないように努め、かつ、主尋問の時間も極力短縮して、本書面による申請としたものです。

   このような事情による申請ですから、本書面による全ての人証申請を認めていただきたい。具体的には次のとおりです。

   原告荻田豊は、本件市道の状況、通行路としての実態、付け替え道路等の状況等に精通しており、原告花上義晴は、採石計画の経緯から、相模興業が本件市道周辺の土地取得してきた経緯、採石場増設計画の経緯などにも精通しており、原告川田利夫は、厚木市の元環境部長、元道路管理課長などを歴任して、厚木市の道路管理行政、環境行政などの具体的方法などについて精通しているうえ、地元の自治会長も務めていたので、道路網整備などの手続関係、地元説明などに関しても詳しい。

   被告本人の重要性は云うまでもありません。本人でなければなかなか語り得ないことが、本件では特に多くあります。

   以上の通り、本書面で申請する4名の人証はいずれも不可欠です。

 

第2 検証の申し出

  以下のとおり、検証の申し出をします。

 1 証すべき事実

  廃止された市道の道路としての状況、歴史的文化的価値及び付け替え道路として認定された市道が道路としては劣悪であって、通行に適さないだけでなく、通行路として危険であること、付け替え道路敷きの大部分が「道路敷き」として不要であること、など

 

 2 検証の目的物

  廃止された市道及びそれに対する付け替え道路(それぞれその一部)

 

 3 その他

  「付け替え道路」は常時無数のが通行人を襲ってくる最悪の通行路であるが、十分な防止対策を施せば、検証は可能です。おって、詳しい「検証指示説明書」を提出します。

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平成17年(行ウ)第12号怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件

原   告  花 上 義 晴 

ほか20名

被   告  厚 木 市 長

2006年7月15日

横浜地方裁判所第1民事部 御中

原告ら訴訟代理人

                  弁 護 士  梶  山  正  三

 

証 拠 説 明

 

(甲8184号証)

証拠番号

証拠の標目

作 成 者

作成年月日

立 証 趣 旨 な ど

81

(写し)

厚木市職員措置請求書

花上義晴ほか

74/07/11

(昭和49年7月11日)

昭和49年、相模興業が西山尾根道の一部を損壊し、発句石を勝手に移動した事に関して、原告花上義晴らが、厚木市長等に対して、原状の回復、相模興業に対する損害賠償請求などの措置を求める措置請求をした事実。

82

(写し)

厚木市職員措置請求について(通知)

厚木市監査委員

74/09/06

厚木市監査委員は上記請求に対して、厚木市長の道路法上の管理責任等を認めて、原告花上義晴らによる措置請求をほぼ全面的に認め、市道の復元、発句石の復元、それらに要する費用の賠償請求などを勧告したこと。

83

(写し)

厚木市議会定例会議事録(抜粋)

厚木市議会事務局

74/09/19

相模興業による上記西山尾根道損壊、発句石侵害に関して、厚木市長が道路管理者としての責任を認め、同教育長も文化財管理上の責任を認めていた事実

84

(写し)

写真集

内田昭

75/02/25〜

75/06/20

(各写真ごとに記載)

相模興業による上記各侵害行為に関して、復元工事がなされている状況

 


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