証拠説明(甲106〜107号証)&原告最終準備書面の補足

平成17年(行ウ)第12号怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件

原   告  花 上 義 晴 


  証拠説明(甲106〜107号証) &

ほか20名

被   告  厚 木 市 長

2007年2月5日

 

横浜地方裁判所第1民事部 御中

   原告ら訴訟代理人

                      弁 護 士  梶  山  正  三

 

証 拠 説 明

(甲106107号証)

証拠番号

証拠の標目

作 成 者

作成年月日

立 証 趣 旨 な ど

106

(原本)

陳述書

川田利夫

2007/01/12

◆乙13号証記載事実に関して、その誤りや、当該書証が三平氏の本来知らないことに言及したものであることについて指摘したもの。

◆原告川田が、本件市道再編成に直接には関わった時期は誤りであったが、それに密接な業務に従事していたこと。

107

(写し)

道路の認定及び廃止について

京都市建設局

ホームページからのダウンロードは2006/12/19

◆「認定路線」でないものについては「廃止」もあり得ないこと。

◆供用開始されて、初めて「認定路線」となること。

 

平成17年(行ウ)第12号怠る事実の違法確認等請求住民訴訟事件

原   告  花  上  義  晴

            ほか20名

被   告  厚  木  市  長

 

2007年2月5日

横浜地方裁判所民事第1部合議A係 御中

 

                 原告ら訴訟代理人

                  弁 護 士  梶  山  正  三

 

原告最終準備書面の補足

0 はじめに

  被告から、平成19年2月1日付けで「準備書面(5)」が提出された。内容

を見ると、どうもこれが被告の「最終準備書面」らしい。原告が2006/12/20付けで提出した「原告最終準備書面」に関する全面的な反論をするつもりで書いたもの(ただし、内容はその多くが従来の「繰り返し」で進歩がない)と思われる。

  被告らしいどこまでもアンフェアなやり方である。先日の結審の延期は、被告がルール破りをしたためで、被告が書面を出せるとしても、「胡散臭い証拠(1318)の言い訳の限度」であるべきで、原告としても、そのような「言い訳」を楽しみにして、それが出たら、それに対する反論に絞って補足の書面を出そうと心待ちにしていたのである。

 ところが、被告は、自らのルール破りで期日が延期されたことを悪用して、原告に再反論の機会を与えないようにぎりぎりになって長文の準備書面を送ってきた。しかも、それには「胡散臭い証拠」に関する言い訳は含まれず、「胡散臭い書証作成者の言い訳文書」のみが書証として添付されてきたに過ぎない。このような「再度のルール違反」を黙認していたら、ルールを守ってきた原告だけが馬鹿を見るではないか。「正直者が馬鹿を見る」ような世の中であってはならない。

 したがって、再度のルール違反をしてきた被告のために、原告としても、あえて、「胡散臭い証拠」に関する批判だけでなく、被告の上記準備書面(以下、本書面においては、単に「被告書面」という)に対する反論を述べることにする。ただし、被告書面の大部分は前述のように「従来主張の繰り返し」なので、原告の反論の多くも、同様の繰り返しにならざるを得ない。そこで、原則として「箇条書きにより、被告書面の誤りを端的に指摘する」形で述べることとした(胡散臭い証拠に関する批判は例外)。

 

第1 被告書面「第1」について

 1 同第1項(被告書面1p)

  省略

 2 同第2項(被告書面1p)

  (1) 同(1)(被告書面1p)

   道路法に基づく、道路管理行政が非財務的事項であることは、原告も争

  っていない。そんなことは、今までの弁論で分かり切ったことだから、仰々

  しく云うべきことでもあるまい。

   本件市道廃止処分は、道路管理行政としてなされたものではない。

 

  (2) 同(2)(被告書面1〜2p)  

  @ 住民訴訟の意味は「参政権的」な意味はあるが、参政権そのものでは

   ない。

  A 議会の議決は、執行権者の行う行政行為の違法性を阻却するものでは

   ないことは確定した判例である。

 

 3 同第3項

  (1) 同(1)(被告書面2p)

  @ 被告のここでの主張には誤解がある。

  A 本件市道廃止処分は、「本件土地交換契約」と切り離して、「それ自体

   において違法」である(原告第2準備書面参照)。

  B 違法事由は、「道路行政上の目的は一切存在しない」からである。

 

  (2) 同(2)(被告書面2p)

  @ 被告は、道路網整備の「一般論」を述べているが、ここで述べている

   一般論は、本件には全く当てはまらないので無意味な論述である。

  A 具体的には、本件市道廃止処分の当時、本件市道周辺土地の利用状況

   や権利関係に変動は何も生じていない。開発行為も実施できない状況で

   あった。

  B 全ては逆であり、土地利用状況の変化もなく、開発行為を実施できる

   状況になかったのに、被告がそのような状況を創り出そうとしたのであ

   る。

 

  (3) 同(3)(被告書面2p)

  @ ここでも被告は、本件市道廃止処分には全く当てはまらない一般論の

   みを展開している。

  A 本件市道廃止は「開発行為」とは無関係になされたものであり、「開発

   行為」の心配など全く不要であったことは、被告も良く知っていたはず。

 

  (4) 同(4)(被告書面2p)

   これも一般論のみ。このような「一般論」それ自体は、争いがないし、

  問題は本件への当てはめなのだから、退屈な一般論を長々とやって欲しく

  ない。  

 

第2 被告書面「第2」について

 1 同第1項(被告書面3p)

  @ 被告がここで展開している「一般論」はいわゆる「先行行為の違法が

   後行行為の違法に承継されるか」という古典的な違法性の承継の理論に

   ついて述べているだけで、本件には当てはまらない。

  A 原告は、本件市道廃止処分は、単に「違法」に留まらず、「無効」であ

   ると主張している(原告第2準備書面)。それは違法性の承継以前の問

   題である。

 

 2 同第2項

  (1) 同(1)(被告書面3p)

  @ 本件市道廃止処分に道路網整備などという目的などあり得ないことは

   既に縷々主張したとおりである。

  A 相模興業と被告との間で、既に平成10年頃から本件市道廃止処分の話

   が出ていたことは、証人宮台も認めている(宮台調書15ページ)。

 

  (2) 同(2)(被告書面3p)

  @ 相模興業の採石拡大事業は、本件市道廃止処分の「原因」ではあり得

   ない。無関係である。

  A 被告は、「本件市道の隣接地で採石事業が実施されれば」というが、そ

   のようなことは考えられないことは既に詳しく説明したとおりである

   (原告最終準備書面3〜5p)。そのような可能性はなかったのに、それを

   違法無効な行為で可能にしたのが被告なのである。

  B 本件市道の周辺で採石事業が実施されても、市道の維持管理に危険はなく、一般交通に危険が生じることもなく、道路網が寸断されることもない(原告最終準備書面3〜5p)。「道路網の寸断と一般交通の危険」は本件市道廃止処分が招いたことである。

  C 相模興業が隣接する民有地一帯を単独所有しているのと主張は否認する。そんな事実はない。せいぜい「かなりの部分」い云うのが正しく、山麓部分には同社の土地はほとんどないから、山麓住民の交通の用に供せられることに関しては何の影響もない。

  D 本件市道廃止処分をしないことが「相模興業の権利を妨害する」と言

   うのは馬鹿げた主張である。相模興業は、本件市道を侵害できないだけ

   で、自己の権利は一切侵害されない。いったい、どんな権利が侵害され

   るというのか??理解に苦しむ。

  E 本件市道廃止処分がなければ、相模興業の開発行為もないし、仮にな

   されても、道路交通の危険はなく、その維持管理にも全く問題はないの

   だから、被告の主張はその前提を欠き失当である。

 

  (3) 同(3)(被告書面4p)

  @ そもそも「採石事業の実施」という現実もないし、仮にそれがなされても、本件市道廃止処分の必要性は全くなかったことは既に十分説明した(原告最終準備書面3〜5p、なお9〜12pも参照されたい)。被告は、そのような必要性もないのに、必要があるように装ったのに過ぎない。

  A 本件市道が健全に維持されている限り、これを廃止して付け替える必要は全くないことは自明である。なお、「付け替え道路」は劣悪きわまりない道路であることは既に詳細に述べたとおりである(原告第6準備書面1〜9p)。このような「劣悪ロード」を認定しながら、「道路網の整備」などと市民を馬鹿にしたことを云うものではない。

 

  (4) 同(4)(被告書面4〜5p)

   本件市道廃止処分の理由も必要もないのに、それを当然の前提として、厚木市担当者と相模興業が地元市民に一切何も知らせずに「相談」していたことは争いのない事実である。証人宮台がそれを認めていることは前述の通り。

 

 3 同第3項

  (1) 同(1)(被告書面5〜6p)

   ここで、被告は本件市道が「供用開始されていない」ということをしき

  りに云うので、この点に関して端的にその誤りを指摘しておこう。

  @ 本件市道がいずれも「供用開始されていた」ことに関する原告の主張

   は、既に整理している(原告最終準備書面5〜9p)ので、それを参照さ

   れたい。若干付け加える。

  A 既存路線と重複する路線に関して新たに「認定」がなされる場合には、

   「区域決定」に際して、既存路線と異なる部分(幅員の変更も含む)関

   してのみ、当該部分について「供用開始」が必要になるのであって、そ

   の全てにおいて、区域が一致する場合には、道路法18条2項但し書きに

   より、供用開始の公示がなくても供用開始されたものとみなされる。

  B 「道路として認定はしたが、供用開始していない」というのは、論理

矛盾である。そもそも供用開始する意思もないのに、認定する意味はない。通常は、「路線認定→区域決定→権原取得→供用開始」の一連の手続をもって「認定道路」となる(107号証)。既存道路とその区域が一致する場合には、「権限取得→供用開始」の手続が不要なだけで、認定道路としての手続は完結しているのである。

  C そもそも未供用の道路であれば、「廃止」の手続は不要である。未供用の道路はそもそも「一般交通の用に供されていない」のであるから、それに「廃止」(一般交通の用に供される必要がなくなったがゆえの)の手続が取られることは論理的にあり得ないのである(107号証)。

  D 被告が、本件市道については「一般交通の用に供される必要がなくな

   った」として、「廃止」の手続を取ったというのであれば、それまでは「一

   般交通の用に供されていた」ということであり、従って、1985年4月1

   日において、「認定」はしたが、未供用だったという理屈は成り立たない

   のである。

  E 本件市道が「未供用だ」という主張は、被告は当初から全く主張せず、訴訟の進行が不利益になってから突如言い出されたものである。これが被告の詭弁であり、被告の本当の認識とは明らかに異なることは、被告自身が必要に応じて「管理している」ことを、本件監査請求におけるヒアリングに際して、明確にそれを認めており、かつ、管理費用の支出をも認めていることから明らかである(「要望があったときとか、現地を確認した時とか、必要に応じて管理をしております」235ページ・道路管理課長の発言)。

  F 被告が引用する13〜18号証がいかがわしい証拠であり、証拠としての価値はないことは既に述べたが(「被告からのアンフェアな書証提出について」2006/12/18付け)、これは主張書面ではないので、後に、これを引用して補足する。

 

  (2) 同(2)(被告書面6p)

  @ もともと本件市道廃止処分の際に「一般交通の用に供していなかった」

   という主張と、「廃止処分」の要件である「一般交通の用に供する必要が

   なくなった」いう主張が論理矛盾であることは既に指摘したとおり。

  A そもそも「認定」は、「供用開始」を前提としてなされるものであり、

認定はしたが、供用開始されない場合は、前述の通り、「権原取得ができなかった場合」「工事が完成できなかった場合」などの場合に限定されよう。認定しながら供用開始しないというのは、道路としての機能を否定しつつ、認定だけするという事態を云うのであり、このような異常な事態を法が正常な行政行為として予定していないことは当然である。

  B 本件市道は手続的にも実態的にも「供用されていた」のであるから、供用開始されていないことを前提にして「その廃止は緩やかに解されなければならない」との被告の主張は失当である。

 

  (3) 同(3)(被告書面7p)

  @ 本件市道の道路としての交通機能が「失われた」のではなく、被告が

   違法な行為により「失わせた」と云うのが正しい。

  A 仮にも、道路行政上の行為として「道路としての交通機能」に着目す

るのであれば、付け替え道路が「本件市道に比して極めて劣悪な道路」であることの説明ができないであろう。詭弁は止めなさいね。

 

  (4) 同(4)(被告書面7p)

  @ 被告は、優良な道路である本件市道を「使用不能」の手続を取ること

   により、付け替え道路を「道路網の整備」目的と称しているだけである。

  A つまり、被告の行為は、優良な道路と劣悪な道路を「付け替える」も

   のであり、道路法上の行為ではなく、また、その目的もないことは明ら

   かである。

  B 本件違法な「廃止処分」は、本件道路を「一般の交通の用に供することができないようにする」ことが目的で、「一般交通の用に供する必要がなくなったから」廃止したものではない。道路行政の目的に真っ向から反するのが本件市道廃止処分である。

 

  (5) 同(5)

   ア 同ア(被告書面7〜8p)

   @ 本件市道は、整備された山道で、多くの人に愛され、また、山麓の住民にとっては重要な交通路であったことは既に多数の書証を提出して立証してきた12〜16、甲26の1〜17、甲31〜44、甲92〜102、なお、原告本人花上、同荻田の各証言)前厚木市長の山口巌もそれを認めていた10、甲26の1〜17)。

   A 被告は、それに反駁する証拠として、証人宮台の証言と同人の陳述書(12)しか、提出し得ないが、同証人が「嘘つき」であり、その証言は「屑籠一杯の嘘」に満ちていることは既に具体的に指摘したとおりである(原告最終準備書面13〜15ページ)。同証人は、西山尾根道をこき下ろしながら、西山尾根道に登ったことはなく、「ごく麓のところに」「市道認定の議案を出す前に1回。後に1回」行っただけなのである(宮台調書30ページ末尾)。そんな「貧しい、嘘つき証人」の証拠しか引用し得ないところに、被告主張の無理があり、それが事実に反していることを証明している。

   B 「敢えて他人の私有地を横切る険しい未整備の山道」というのは、何を云っているのか理解できない。本件市道は、厚木市の市有地であり、「他人の私有地」は含まれない。

   C 「起伏も少なく舗装された麓の市道」というのも、何を指しているのか理解できない。余り関係のないことを云うべきではない。少なくとも「付け替え道路」と称するものがそれに該当しないことは明白。もともと市町村道は生活道路が主であり、車の通れない道路や路地裏の道路なども普通に存在する。本件市道は、その意味では「普通の市町村道」のレベルである

   イ 同イ(被告書面8p)

   @ 相模興業の単独所有地は、本件市道周辺の一部である。「広大な民有

    地」というのが、どこを指すのか不明である。

   A 本件市道の交通事情と相模興業が周辺地域の一部を所有していることは何の関係もない。利用者はもともと山麓の住民であり、相模興業の土地利用とは無関係である。

   B 被告は、ここでも証人宮台の証言を引用しているが、宮台氏は、地元の事情をそもそも知っているはずはないのであり、「2回行っただけ」の人間の「口から出任せ」に何らかの意味があるように云うのは質が悪い。

   ウ 同ウ(被告書面8p)

   @ 2人の自治会長の「同意」と称するものは、相模興業が署名だけもらってきたもので、本件市道廃止処分とは無関係である。そもそも被告の専権に属することを相模興業に同意書を取ってこさせたとしたら、それこそ「被告と相模興業の共謀関係」が露見してしまうではないか。

   A 先祖代々の地元住民や地元自治会長でさえも、本件市道廃止処分が厚木市議会に議案として提示される直前まで、「全く知らなかった」事実は、本件市道廃止処分が地元住民に秘密裏に進められてきた事実を示している(原告最終準備書面15〜17ページ)。地元自治会長のうちの前記2名の「同意書」なるものの作成経緯は文面から見てもいかがわしいものだが、それをさておいても、単なるボス交渉以外の何物でもないことは一目瞭然である。

   エ 同エ(被告書面8p)

   @ 実に馬鹿馬鹿しい記述である。「通行する者を確認できなかった」など意味がない。生活道路は、時間帯により、ほとんど誰も通行しないこともあり得ることは「普通」のことである。日常的な状況を把握するには、「行ってみた」ということに何の意味があろう。地元住民にヒアリングするのが最も良い方法であることは誰にでも分かる。被告は、そういう、最も必要な調査をせずに、無意味な調査をして、「一般交通の用に供する必要がない」などという理由を捏造してきたのである。

   A 証人宮台は、「何も知らない人」である。そんな証言しか引用できないの?

   オ 同オ(被告書面9p)

   「登山」と「ハイキング」を区別して、本件市道を歩くのが「登山」だなどというのは噴飯ものである。これについては、余りに馬鹿馬鹿しいので、既に述べたことを引用するにとどめる原告最終準備書面13〜15ページ)。

   なお、都会的感覚で「道路」を考えると誤りやすいが、山道も立派な道路であり、生活道路であるという事実である。車の通れない生活道路は山村では珍しくない。普通の存在である。

   カ 同カ(被告書面9p)

   @ 本件市道の機能は回復されていないことは「地元住民」が最もよく知っている。

   A 「機能回復道路」が劣悪な道路であることは既に何度も述べた。

   B 証人宮台は、地元のことは知らない人。付け替え道路も歩いたことがない人。本件市道も歩いたことがなく、麓に2回行っただけの人。そんな人の「分かったような嘘」が信用できないことは自明の理。

   C 付け替え道路には「交通機能がない」というのが原告らの主張である。景観や観光資源としての価値は云々していない(そんなものがないことは余りにも明白だから)。

     なお、付言すると、「景観」や「環境のすがすがしさ」は「交通機能」そのものではないが、重要な要素である。真っ暗でじめじめした道路は、心理的にも「通りたくない」ということになるから、それは「交通機能」にも悪影響を与えるのである。まして、「付け替え道路」は山蛭が足下から無数に湧いてくる「危険な道路」であり、交通機能という点から見ても劣悪であることは云うまでもない。

   キ 同キ(被告書面10p)

   道路法の要件は満たさないことは明白。道路法の趣旨に真っ向から反す

  る処分である。

 

 4 同第4項

  (1) 同(1)(被告書面10p)

  @ 被告は原告の主張を理解していない

  A 原告らは、地元住民への周知やヒアリングを法的義務として主張するものではない。

  B 市町村道は基本的には全て「生活道路」である。

    生活道路に関して、その廃止処分をする際の調査の対象はその「利用実態および将来における利用の必要性」のはずであるから、当該道路を利用する立場にある地元住民からの念入りなヒアリングは不可欠のはずである。

    被告が真に道路行政上の処分としての、本件市道の廃止を検討するのであれば、当然「地元ヒアリング」を念入りにやらなければならない。それを敢えて避けて、秘密裏にことを進めたことは、本件市道廃止処分が道路行政とは無関係になされたことの重要な証左である

  C 全てを相模興業との間で決めて、厚木市議会に提出した後に、一部の人の指摘で、慌ててアリバイ的に一部住民にたった1回だけ説明しても、何の意味があろう。このような主張は、かえって、被告の主張の欺瞞性を浮き彫りにさせるのだということを知るべきである。

 

  (2) 同(2)(被告書面10p)

  @ 地元住民の意思は、「一般交通の用に供する必要性」の重要な間接事実

   である。そのような調査やヒアリングを一切やらなかったことは争いが

   ない。被告の主張は言い訳にもなっていない。

  A 道路管理課長の発言は、その「地元のことは全く念頭にない」という道路交通の実態を反映した道路行政とはかけ離れた被告の態度の「1つの現れ」として述べたに過ぎない。何が「理由がない」だ。

 

  (3) 同(3)(被告書面11p)

  @ 本件市道廃止処分については、道路管理行政としての必要性は一切認

   められないことは既に十分述べてきたとおりである。

  A そうであれば、被告は、本件市道廃止により惹起される甚大な環境破壊に関して、「住民の福祉を増進を図ることを基本とする地方行政」(地方自治法1条の2)の見地を考慮することは当然である。

  B 本件市道廃止処分が仮に、「道路行政」としてなされる場合でも、「住民の福祉を増進を図る」視点は「地方行政の基本」なのであるから、あらゆる行政行為の基本原則であって、これを考慮することは「他事考慮」ではない。まして、本件市道廃止処分は、道路管理行政としての行為ではなかったのであるから、被告の非難は的外れである。

  (4) 同(4)(被告書面11〜12p)

  これは詭弁である。そんな馬鹿げた主張を誰がまともに取るものか。

 

  (5) 同(5)(被告書面11〜12p)

  被告の「反論及び従前の反論」というのが具体的に何を指すのか不明だが、原告の主張に対するまともな反論は何一つなされていないのは確か。

 

第3 被告書面「第3」について

 1 同第1項(被告書面12p)

  この点は既に言い尽くした。なお、本件市道廃止処分の「無効」事由と「違法であるが故に無効」、かつ、本件土地交換契約の違法事由については、原告第2準備書面で整理しているので、それを引用する。

  本件市道廃止処分は「無効」なので、本件各市道は、そもそも普通財産に転換されていないのである。

 

 2 同第2項(被告書面12p)

 @ 付け替え道路が、既に述べたように「劣悪な道路」「交通機能のない道路」

  である以上、必要な土地交換契約とは認められない。 

 A 「山蛭」が西山全体に生息しているのと主張は否認する。本件市道など風通しの良い尾根道には生息していない。付け替え道路のように「昼なお暗き、陰鬱でじめじめした道路」が山蛭の好む環境である。

 

 3 同第3項(被告書面12〜13p)

 @「不動産鑑定評価」と「固定資産税評価」とは全く異なるものであること

  は周知の事実である。

 A 現実の「類似取引事例」で、固定資産税評価と全く異なる評価がなされ

  ている以上、不動産鑑定評価は当然必要である。

 B 本件交換契約の違法事由としては、「道路機能」として劣悪なだけでなく、

  取得した土地のうち、全く不要な部分がその多くを占めていることから、実質的にみて「土地交換契約」の体をなしておらず(つまり、仮に千歩譲って、面積当たりの単価がほぼ等しいと仮定しても、取得部分と渡した部分とが極めてアンバランスである)、一方的に相模興業に利益を与える点においても厚木市条例に違反するものである(原告第6準備書面6〜9ページ)。

 

 4 同第4項(被告書面13〜14p)

 @ 度々云うように、相模興業の採石拡大事業は、本件市道廃止処分の「原因」ではあり得ない。それは「被告の心情的な動機としての原因」ならばそのとおりだが、法的にはナンセンスである。

 A 原告らは相模興業の採石事業が「絶大な環境破壊行為である」という主張はしているが、それが本件市道廃止処分の違法事由であるとの主張はしていない(付随的事情としては述べている。原告の主張をちゃんと読みなさいね)。違法事由については、何度も述べているが、「道路管理行政と無関係な、かつ、道路網整備という目的に真っ向から反する」ことである。

 B 本市道廃止処分が相模興業の採石場拡大事業への「便宜を図る」ためであったことは、被告も認めているところである。被告は度々述べているように「本件市道を廃止しないことによって、訴外会社の私権の行使を妨げることは許されない」などと述べているが(これが、法的にも全くの誤りであることは既に指摘した)、逆に云うと、「訴外会社の採石事情の便宜を図る」ために、本件市道廃止処分を行ったことを自白するものである。

 C 被告が、「法令上許される限り」において環境への配慮を行ったとの主張は否認する。本件市道廃止処分をしないことが、上記採石事業による絶大なる近況破壊を防止する最も有効な方法であるが、被告は、法令上、何の必要も、理由もないのに、本件市道廃止処分をしたのである。

 

 5 同第5項(被告書面14p)

  @ 本件市道廃止処分が無効である以上、本件市道はそもそも本件土地交

   換契約の対象になり得ない。

  A もともと土地交換契約の対象になり得ない行政財産を失った以上、そ

   れによって得た対価も相手に返還すべきものであるから、その対価の額

   を問題にすることなく、失った行政財産の喪失それ自体が損害と解すべ

   きである。

 

第4 被告書面「第4」について

  これは「まとめ」なので、既に述べたことと重複する。以下、念のため。

 @ 「本件採石事業が不当」だと原告らは主張したことはない。「絶大な環境破壊をもたらす」という主張である。曲解はやめよう。原告らが問題にしているのは、あくまで、「被告の違法行為」である。

 A 本件市道廃止処分が採石拡大事業を阻止できるかは、本件の争点ではない。本件市道を廃止しなければ、採石拡大事業が著しく困難にはなるが、それは「結果論」であって、原告らの主張は、「本件市道を廃止する理由はなく、維持すべきだ」というに尽きる。

 B 本件採石拡大事業を「厚木市が差別して扱え」という主張は原告らはしていない。「何の理由もなく、違法行為までして便宜を図る」ことを非難しているのである。

 C 本件市道周辺の利用状況が「大きく変化している」事実はないし、本件市道を維持したまま、採石拡大事業が行われても、周辺の状況が「大きく変化することはない」から、いずれにしても、本件市道を廃止しない限り、道路網整備の必要はない。

 D 被告がやったことは、「道路網の破壊」であり、「優良な道路を劣悪な道路に変えること」であった。

 E 本件市道の廃止処分をしないことが、「相模興業の私権の行使を妨害する」ことになり得ないことは法的には当然である。同社の私権は、あくまでその所有地内の問題だから、本件各市道に対する私権などもともと存在しないのであり、存在しないものを妨害しようがない。原告らも、相模興業がその旧来の私有地の範囲内で採石事業を行うことを認めないなどという主張はしていない。

 F 私権を妨害するおそれもないのに、単に私権の拡大に便宜を与えるためにだけなしたのが本件市道廃止処分である。被告は、法令に違反し、市民利益に反し、住民の福祉の増進を図るという、「基本」に反して、本件市道廃止処分を行った。これを「私権の妨害」などと云うのは、本末転倒どころか、法令秩序を知らない者の言辞である。 

 

第5 被告の胡散臭い書証について

  被告提出の13〜18号証に関しては、前述の通り、2006/12/18付け「被告のアンフェアな書証提出について」と題する書面で、そのいかがわしさ、胡散臭さについて指摘した。

  今回、被告からその弁解のためと思われるが、19号証が提出されたが、肝腎なことに一向に答えていない。上記書面と一部重複するが、上記書面が主張書面ではないことから、これを引用しつつ、補足して、いくつか指摘しておこう。

 13号証及び乙19号証

@ 「陳述書作成者」として三平定邦氏の名前が記載されている。しかし、その内容から見ると、三平氏が直接経験した可能性のある事実は、その一部に過ぎず、大部分は自ら経験したことのない事実を記述している。つまり、陳述書としての実質がない。

A 三平氏は、その現在の上司であり、法廷で証言した宮台功氏の証言していないことまで述べている。本来三平氏が述べていることは、証人である宮台氏が法廷で述べて、「反対尋問」に曝すのが証人尋問のルールである。したがって。三平氏陳述書は「反対尋問を回避する」ことを目的として、証人尋問のルールを脱法的に回避しようとするものである。

B 三平氏の「陳述書」に対して、これを読んだ原告本人の川田氏から適切な指摘がなされているので、これを引用する(106号証)。

B 19号証についても、三平氏が、「如何なる立場で、如何なる経験から」これを作成しているのか明らかでない。 

 15号証

@ 立証趣旨と証拠内容との整合性がない。

A 被告が引用しようとした箇所(黄色蛍光ペンマーク)は、被告の云う趣

旨とは異なる。

 16の1〜7号証

 @ 立証趣旨と証拠内容との整合性がない。この書証では、未供用部分は特定されていない

 A 路線認定が、昭和604月になされたのであれば、その時に作成された同目的の文書があるはずであるが、それが「紛失したらしく見あたらない」というのが、公文書公開手続でそれを求めた際の、厚木市の原告らに対する説明である。そうすると、「基となる資料が見あたらないのに、それを基にした資料」としてのこれら書証は、「その内容に信用性がない」ということになるはずである。

 ※上記については、90の2の2枚目を見てほしい。原告川田が、厚木市に昭和60年4月の市道再編成の際の「廃止・認定・供用」の3種類の告示における各路線一覧表を求めたのに対して、厚木市が平成18年11月21日付文書で「不存在(当該文書の存在が確認できない)」と述べている。訴被告主張によると、この「市道再編成の際に」「本件市道は認定はされたが、供用開始されなかった」という主張をしているのであるから、この時の告示文書が全て、その根拠の出発点になるはずで、その後に、作成された文書に「供用・未供用」の区別があるとすると、それが

   (A) 「紛失した告示文書を基にしたのかどうか」

   (B) 「紛失した告示文書を基にしたとしたら、紛失前のどの時期に、どのようにしてそれを基にすることができたのか」

   ということが具体的に明らかにされなければならないが、今回提出された19号証はその点に全く答えていないのである。三平氏が、直接乙16以下の文書作成に関わっていないであろうことは推測できるので、これも「根拠のない」戯れ言として聞くべきであろう。

 B 以上の通り、1617は、どのような資料に基づいて、如何なるプロセスで作成されたのか、19によつても全く不明である。また、これらが、作成された年月日は、提示書証それ自体からは特定できない。三平氏が、「いつ頃作成された」と云っても、それが文書自体において明らかでないのだから、信頼する理由がない。上述のとおり、「紛失した基の文書」との関わりも明らかにされなければならないが、19は、全く触れていない。

 17の1〜7号証

 @ 立証趣旨と書証との整合性がない。これにより未共用部分を特定することはできない。

A これは市道再編成の行われた昭和604月に作成された資料をもとに作成されなければならないが、前述の通り、「基になる資料が紛失している」以上、このような資料は作成できないはずであり、どのような資料に基づいて、これらを作成したのか明らかでない。19もその点は明らかにしていない。もっとも、三平氏自身も自らは体験していないはずである。「原資料」もついに書証として提出されなかった。

 18号証

 @ 立証趣旨と書証との整合性がない。

 A 「写し」として提出された上記書証には、「説明のためのシール」が貼られ、さらに、赤鉛筆、緑鉛筆で、「共用部分」と「未共用部分」が手書きで書き込まれている。原本を「写す」ことによって、「シールが出現」したり、「赤鉛筆や緑鉛筆の説明が出現」したりすることはあり得ないから、「シール貼り」「色鉛筆等の書き込み」は原本にないものを、書証として提出するに際して書き込んだものであることは確実である

   そうすると、「原本」には、「供用・未供用」の区別を示すものは何ら存在しないことも明らかで、立証趣旨とは無関係な資料である。

 B この道路台帳と称するものは、平成153月作成とされているが、そのもとになる資料について明らかでない。前述の通り、161719は、その根拠にはなり得ない。供用・未供用は、被告の主張によると昭和604月に決まったことになるから、その際、作成された資料が原資料のはずであるから、当該原資料と「道路台帳作成経緯」の関係が明らかにされなければならないが、19は、その点に触れていない。

 

  以上を要するに、161718は、事後的に作成されたもので、それに何らかの原本らしきものがあるとしても、18の原本らしきものに「供用・未供用」の記載がないことは明らかで、1617に何らかの記載があるとしても、その作成時期と称するものから云うと、紛失したはずの22年前の原資料に基づいて作成されたものとは考えられず、いずれにしても、被告の立証趣旨から云うと何の役にも立たないことは明らかである。

 

第6 結語

  簡単に済ますつもりがつい長くなってしまった。最後に一言付け加えておきたい。

  本件市道廃止が無効・違法であることが明白であっても、それを第三者である訴外相模興業に対抗できるかという問題がある。

  この点に関しては、状況により裁判例の結論も異なるが、要は不動産登記における「背信的悪意者」と同様に、当該第三者を取引の安全の見地から保護すべきかどうかという視点において類似性を有するであろう。

  本件に即して云えば、相模興業を保護する必要は全くなく、その点において、被告は、本件市道を同社から取り戻すことができることは当然と云うことになろう。

 

以 上


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