平成19年(行コ)第239号 怠る事実の違法確認等請求住民訴訟控訴事件

控 訴 人  花 上 義 晴 ほか17名

被控訴人  厚 木 市 長

2008年4月10日

 

東京高等裁判所第2民事部 御中

控訴人ら訴訟代理人

弁 護 士  梶  山  正  三

控訴人第5準備書面

  本書面は、控訴人第4準備書面記載の主張を補足するものである。

1 本件各市道の機能・役割〜被控訴人の謂われなきイイガカリ

  被控訴人は、西山尾根道の機能・役割について、平成20311日付準備書面において、根拠もなく控訴人らの主張を否定しているが、そのどうにもならない非論理的戯言たるゆえんを三点だけ指摘しておく。

 @ 被控訴人は、西山尾根道の機能・役割について、その主張を証明する証拠を何一つ提出したことがない。原審で提出したのは、西山尾根道を1回も歩いたことがない宮台氏の陳述書と同人のウソだらけの証言だけである。人の云うことを否定したいのなら、証拠の1つぐらい用意しなさい。

   それに対して、控訴人は、原審以来写真、陳述書、証人・原告本人の証言、各種資料など、それこそ「山ほど」の関連証拠を提出してきた。

 A 控訴審の結審間際になって、被控訴人は上述の準備書面において、突如、測量会社の測量士の「経験」を持ち出してきたが、これも滑稽である。真にそんな「いい話」があるのならば、何で今まで黙っていたの

原審以来、そんな話は一言もなかったのに、控訴審の結審間際になって突如出してきても、誰もそんなもの信用しない。しかも、当該測量士の陳述書もなければ、それを証人申請するわけでもない。

 B 被控訴人は、上記平成20311日付準備書面において、我妻恵子氏の証言に対して、「後の期日において『何をしに来たのか、分かるのはハンターだけです』と強弁して辻褄を合わせている」と述べているが、本件市道の実情に関して、何一つ証拠も提示せず、事実に反することばかり主張してきた被控訴人が云うべき言葉ではない。我妻証人に対する誹謗中傷であり、根拠のないイイガカリである(甲147)。

 

2 本件土地交換契約の無効事由〜議案89号の検証(補足)

  本件控訴審において、控訴人は、本件市道廃止処分の無効事由に関して、原審で主張してきたものに加えて、議案89号それ自体において瑕疵があることを述べてきたが、上記主張に関して、被控訴人から提出された証拠をも踏まえて、控訴人の主張を整理・要約する。

  第1に、控訴人の主張によると、本件各市道及び悪路の付け替え道については、その測量による確定図面(乙23)は平成16年6月に作成されたが、それ以前は確定図面はない(争いのない事実)ので、議案89号が提出された平成15年9月1日の時点において、図面はなかった。そうすると、議案89号は、廃止される市道の全てに関して、範囲・地積を確定しないまま、「延長・幅員」についても根拠のない数値を議案に記述して提案されたものであるから、重大な瑕疵があると云うべく、議案全体が無効である。

  第2に、控訴人第4準備書面で述べたように、少なくとも市道-779に関する限り、議案89号で議会に提示されたものは、認定処分の対象となる部分(甲145の測量図面で特定されるもの)とは、全く異なる道路であるから、市道I-779に関する限り、その認定処分に対する議決は無効である。

  なお、被控訴人は、議案に添付された図面は、「参考資料」であり、間違いがあっても、議案の効力に影響はないと主張するようであるが、議決の対象となる道路部分が特定していなければ、そもそも議案自体が成り立たない。したがって、添付された図面は「議案の内容を特定するための1つの資料」であって、軽微な間違いならばともかく、「全く異なる道路」としか解することができないほどの大きな違いがある以上、被控訴人の上記主張は誤りといわざるを得ない。控訴人第4準備書面に掲げた図を下に再掲するが、市道認定路線図に示されたI-779路線(これは、議案89号添付の図面と同じと見て良い)と、被控訴人が認定処分の対象とする(つもり?)だったと思われるI-779(甲145の測量図面)とは「全く異なる路線」としか見えないことは誰の目にも明らかであろう。しかも、議案89号においては、地積・範囲も確定しないまま、根拠のない「延長・幅員」が記載されていたのであるから、「図も誤り」「地積・範囲も未確定」「根拠のない延長・幅員の記載」

三拍子揃っている以上、議案の対象となる道路部分を特定する術はなく、議案それ自体が「不特定の故に無効」ということになるのである。

  第3に、本件市道認定及び廃止処分よりもずっと後(平成17年3月)に作成された市道認定路線図(上の図)においても、I-779の位置は、甲145の図面とは全く異なる位置に記載されているが、このことは、被控訴人である厚木市長自身が、議案提出時において、「参考資料」としての図面記載のI-779を認定処分の対象道路として認識していたことを示すものであり、提案者自身の認識も、「参考資料」と一致する以上、甲145に示されたI-779が議案89号によって認定処分の対象となったと解する余地はない。

 

3 間違いだらけの乙31号証

  厚木市道路管理課長によって作成提出された乙31号証は、はなはだお粗末な書面であり、いわば「間違いだらけ」である。網羅的に述べる意味もないので、本件訴訟の争点と関係のある部分のみ若干の指摘をしておく。

@ 市道認定路線図(甲第126号証)について
 議案の参考資料として、各路線の大まかな位置や路線の接続関係等が議員等に一見して分るように示した図であるとのことであるが、「一見して分るように」全く違う位置に路線が示してあるうえ、議決後も「一見して全く異なる路線図がそのまま修正されずに」作成されている(甲144)のであるから、議会の混乱と議案無効の元でしかない。

A 道路の供用について
 本件については、供用開始しておりませんとの記述がある。既存路線については、認定行為があれば、供用とみなされるというのが、控訴人らの主張であるが、被控訴人の「供用」に関する主張を前提にしても誤りである。現行の道路台帳を基本にしても、供用開始されていないのは、I-779だけである。I-776、I-777,I-778については平成161018日に一部供用開始されていることが道路台帳にも明記されている。

B 道路区域の決定

 平成161018日に道路法18条1項に基づき、区域決定をしたとのことであるが、道路台帳上では、I-779については、区域決定がなされていない。よってこの説明は虚偽である。

C 路線の廃止について

 一般の交通の用に供する必要がなくなったことが「大前提」だと述べているが、本件訴訟では被控訴人でさえも、そんな「大前提」は一切主張していない。議案の提案でも議会審議の過程でも、そんな話は一切なかった。ひたすら、「相模興業の採石事業の拡大」に資するためだということは、議会でも被控訴人が認めていたことである。しかも「大前提」だとすると、付け替え市道を機能回復のために認定したことと大きく矛盾する。

 ちなみに、高倉秀基氏が、厚木市のホームページ上の「市長への提案メール」画面において、厚木市長に対して、「西山稜線が壊されて良かった」との気持ちを表明するように提案したところ、厚木市道路管理課からは、西山尾根道の市道廃止処分は、もっぱら、相模興業の採石事業認可の事務手続きに合わせて進めてきたことを表明する回答メールが来ており、このことは、「一般交通の用に供する必要がなくなった」との乙31で述べる上記「大前提」は大嘘であることを如実に示している(甲148、甲149)。

 

4 結 語

  本件土地交換契約に示された「厚木市元所有地」と「相模興業元所有地」の「地積」を見ると「公簿面積」と「実測面積」が小数点以下の部分を除いて、全部一致していることに気が付く(甲4、訴状末尾の目録参照)。

  公簿と実測がこのように「全てぴったり一致する」ことは絶対にあり得ないことであり、不可解な現象であった。しかし、今回、議案89号が全く実測図もないのに提案された経緯を知って、上記謎が解けたようである。

  議案89号の市道廃止・認定の範囲は上記土地交換における「厚木市元所有地」と「相模興業元所有地」の範囲と一致しなければならない。そうであれば、実測図のないときに提案された議案89号と実測図が曲がりなりにもできた後の「厚木市元所有地」と「相模興業元所有地」の範囲が、本来は一致するはずはないのである。しかし、それを無理にでも一致させなければならない必要が生じた。

  思うに、土地交換契約の「実測面積」は被控訴人としては、恣意的な数値でも良かったのかも知れない。本来合致しないものを合致しているような外観を作ればよいのだから。しかし、全く恣意的な数値を記載することはできない。そこに、もっともらしい数値として公簿面積に「類似した」実測面積が登場する理由がある。

(終)











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