厚木市職員措置請求書

                           2004年12月6日

厚木市監査委員 殿

 

 請求人の表示 別紙請求人等目録記載の通り

 

 請求人代表

西山を守る会 代表 花上 義晴

 

厚木市長に関する措置請求の要旨

 

T.請求の趣旨

 

 厚木市長に対し、厚木市と相模興業(株)が平成16年7月13日付けで締結した別紙、土地交換契約書(以下「本件土地交換契約」と云う)に基づく財産の処分は違法な財産の処分・管理に当るので、当該交換契約を解除または解約するなどして、同契約締結前の状況に復することにより、厚木市が本件土地交換契約によって蒙った損害を回復させるために必要な措置、及び、予測される市民に与える損害を防止するために必要な措置を講ずるよう求める。

 

U.措置請求の理由

 

(1) 請求人

 

  請求人はいずれも厚木市民である。

  請求人代表 花上 義晴は元厚木市議会議員である。市民として、厚木市の財務会計上の違法不当な行為を正すことは請求人らの責務であり、権利である。

  請求人 花上 義晴(西山を守る会代表)は有志と共に、相模興業(株)華厳採石工場増設計画に係る採石許可がなされた場合の、市民福祉に反する問題点を厚木市当局に指摘し、その解消を求めてきた。

  本件監査請求は、相模興業(株)華厳採石工場増設計画に関して、厚木市長と相模興業(株)が、本件土地交換契約を締結したことは、厚木市の財産の処分が厚木市の条例等に違背し、かつ厚木市に回復困難な損害を与えるものであるから、その是正を求めるものである。

 

(2)相模興業(株)華厳採石場増設事業の計画と問題点

 

@ 本事業は相模興業(株)採石場増設事業と称し、実施区域と関連区域からなっている。実施区域は厚木市中荻野字西山1933−34外3筆のうち、約29.4ha、関連区域は厚木市飯山字華厳地区約72ha、合計約101haの岩石採取を行うもので、その採石量は、30年間一日当り10tダンプ500台分に相当する全国屈指の一大採石生産基地であると共に、そのまま全国屈指の公害発生基地となるものである。

 

A 本事業の最大の問題点は、その厖大な採石量にある。その採石量は本件土地交換契約によってもたらされるものである。まず第一に市道西山尾根道を自己財産としたことで、高取山を頭から丸かじり同様の採石が可能となったこと。第二に関連区域(既存の華厳採石場)は昭和45年頃より30年にわたる採石で終掘に近い状況にあったが、本件土地交換契約によって、市道保全のための許可条件(保安距離を含む、ひな段状に残された段丘)が除かれることになり、まさに起死回生、大量の再採石が見込まれることになったこと。第三に採石プラント他、既存の設備がそのまま稼動できること。

 

 以上の如く、厚木市は、西山の市道廃止も付け替え道路も全く必要としないのに、敢えてこれを強行し、本件土地交換契約を締結した。しかも、普通財産の交換形式を取っているのに財産の経済価値を無視した等価交換であることから、相模興業(株)は居ながらにして巨利を得、市は重大な損害を蒙り、市民は市道変じて骨材となったことにより、長期塗炭の苦患を強いられ、いわゆる「豆を煮るにまめがらをたく」に等しい、悲劇の主役にされてしまったのである。

 

(3) 請求の根拠

 

@ 厚木市議会平成15年12月の定例会で、議案第89号「市道路線の廃止及び認定について」が議決された。

議案第89号は平成15年7月10日付 相模興業(株)が市長に申請した「市道路線の付け替え申請」を受けて作成された議案である。

付け替え申請の内容は、行政財産である市道 I−705号線(西山尾根道延長5921m)のうち高取山尾根部分延長1281m(5673.92u)を岩石採取のため掘削したいので、市道を廃止し、その廃道路敷(普通財産)と廃止路線の付け替え用地として相模興業(株)所有の山林(5905.39u)とを、交換することを求めたものである。

   議案第89号議決の結果、平成16年7月13日 厚木市長(甲)と相模興業(株)(乙)

は土地等価交換契約を締結、相模興業(株)は付け替え申請どおり、高取山尾根道の市

道を採石可能な自己所有財産とすることに成功した。同社は高取山稜線約1.2kmを深

さ200m掘削することで、30年間一日当り10tダンプ500台分の莫大な骨材を

掌中に収めることとなった。

  市道廃止は、道路法第10条1項の、「市長は、市道について、一般の交通の用に供す

る必要がなくなったと認める場合、廃止することができる」のであって、本件市道の廃

止は、明らかにこの条項に違反する違法な処分であることを、以下の事実に基づき申し

述べる。

 

. 市道I−705号線は、近年八菅修験の歴史的コースであることが明らかとなり、

特別な文化性を有するものとして、調査解明への期待が高まっている。また高取山尾根の廃道路敷には、スズリ石・毛抜き石そして文化年代から親しまれている発句石、さらに華厳山・経ケ岳に辿る途次には蚕種石・経石を始め近傍に松石寺新四国八十八ケ所の石仏群、弘法大師にまつわる伝承など、郷土史学習資料の宝庫として昔も今も好学風流の士の足跡の絶えることを知らない。

 

. 市道I−705号線は尾根からの景観が出色である。眼下の里山の間に佇む集落の風情。荻野川・小鮎川・中津川の流域に残る牧歌的田園風景。市域都市化の経過を追うことも出来る各小・中・高・大学や病院・工場やビル街、四通八達の道路網等郷土厚木のパノラマが一望に収まる。さらには相模平野を帯となって馬入に注ぐ相模川や、

はるか京浜から相模湾、伊豆半島がかすむ絶佳の眺望は、豊な動植物に触発される自然観察の喜びも加わり、市域はもちろん、広く首都圏からの登山者等の訪れも漸増している。

 

. 本件市道廃止は、尾根道特有の、従って尾根道以外の土地では代えることの出来ない幾多の市民利益を把握することなく、一企業の利益のための廃道と道連れに、消滅させると云う、言語道断の所業であり、市道の日常管理の怠慢を示すものとして、地方財政法第8条「地方公共団体の財産は常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的にこれを運用しなければならない」に違反する。

また、発句石、八菅修験道等は市教育委員会発行の調査書等に示される厚木市の文化

財であって、市道廃止による侵害は文化財保護法第3条及び第4条に違反する。

 

A 本件採石事業により、市民が被る損害について

 

 ア. 相模興業(株)が県知事宛に提出した「環境影響予測評価書」の数字によれば、1

日当り10tダンプ1000台(往復)の横行が見込まれ、交通被害の急増を予測させる。現状すでに、登校時の児童の安全確保のため保護者が交替で旗を振り、運転者

の協力を求め、児童を誘導するなどの例も見られ、受忍の限界に達している。

更に深刻なのは排気ガスの被害である。ちなみに、10tダンプ1台の窒素酸化物

  排出量は3000ccの乗用車30台分に相当すると言われ、市民の受ける健康被害は測り知れないものがある。

 

. 長期かつ大規模な自然破壊は、騒音・振動・粉塵の継続的発生、オオタカをはじめ絶滅危惧種を含めた動植物群の生態系の破壊、農業用水、地下水の減少と汚濁、活断層と直下型地震の恐れなど、憂慮百出の事態である。

 

. 西山の景観は郷土文芸や民俗行事に絶えず登場する。住民は今も、荻野音頭や荻野中学校校歌として地区や学校の行事の度に、称讃と愛着をこめた唄と踊りを楽しんでいる。その目の前で西山を平然と削らせる、住民特に童心を傷つけること、これほど心無い仕打ちがあろうか。

   旧荻野村の中央、元役場跡に立つ、先の大戦の戦没者慰霊塔に197名の氏名が刻まれている。西向きの碑面の彼方に西山が見える。異境戦陣にあって、明日をも知れぬ身の、肉親郷党への思いと重なったであろう、故山西山の静かな姿が其処にある。

 西山は住民畏敬の山である。

 

 本件財産処分は、地方自治法第1条の2「地方公共団体は、住民福祉の増進を図ること

を基本として、地域における行政を民主的綜合的に実施する役割を担う」に違反する。

また、「地方教育行政の組織と運営に関する法律」第23条の、特に6号・9号・10号・

14号及び第25条に違背する。

 

B 本件、財産の管理及び処分上の違法性について

  

. 市道I−705号線につき、市長は「交通の用に供する必要がなくなった」として廃道にした。一方議会においては「付け替えによって機能は回復される」と説明している。「機能の回復」とは現に利用されていることを前提にしている言葉であって、市道廃止とは整合しない。このことは、@のアとイの事実の通り、市自らが付け替えの必要が認められないことを表明したもので、本件財産処分は道路法第10条1項の違反に止まらず、『厚木市財産の交換等に関する条例』第2条1項の1号「本市において公用又は公共用に供するため、他人の所有する財産を必要とするとき」同2号「国又は他の地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するため本市の普通財産を必要とするとき」の各規定に違反する。

また、この条例の根拠法たる地方自治法第237条2項の規定の趣旨に反するものである。

. 本件土地交換契約が等価交換であることは理解できない。

   本来普通財産の処分は、その財産の市場価値によってなされるべきであって、本件

  交換渡財産(廃道路敷)は、相模興業(株)が採石事業者として、骨材と言う商品を

長期安定的に確保するために利用するものであり、普通の山林である交換受財産とは

財産の実質的価値が全く異なるものである。本件等価交換は、地方自治法第2条14

項及び、地方財政法第8条に違反する。

また厚木市財産の交換等に関する条例第2条1項の「交換財産の差額について」の

規定の趣旨、同2項の「財産の差額と金銭補足について」の規定の趣旨にそれぞれ違

背する。

 

. 本件市道I−705号線に係わる一連の財産処分は厚木市固有の行政事務である

から、市の自主性によって民主的に決定されなければならない。

   ところが事実経過は、企業の要求が主導し、市は県環境アセスが市の上位にあるか

のように扱い、情報・資料の開示も、地域住民、市議会、市教育委員会にも殆どなさ

ず、業者が県環境アセス条例に基づき極めて限定された地区で自社本位に行った説明

会を、恰も市の説明会に代わるものの如く装い、或いは業者の代弁者の如くふるまう

など誠実に欠ける態度に終始した。

   このことは、地方自治法第1条の「民主的能率的行政の確保」の趣旨に合わず、同

法第1条の2の「行政を自主的総合的に実施する役割」に反するものである。

 

V. 結 論 

 

以上の事実は地方自治法第242条第1項の規定に該当する。

 特に市長は、本件採石事業は市民に百害あって一利なく、将来にわたって公害防止のた

め巨額の市費の支出が見込まれることに重大な責任を自覚すべきである。

 ここに、専門機関としての貴職の見識に信頼し、冒頭の措置を講ずるよう請求する。

 

 

 

 地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え必要な措置を請求

します。

 

 

 

 

 

 

請求人等目録

  (請求人)        

 

 住        所

 職    業

 氏      名     印

〒243−   

 

 

 

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